月別アーカイブ: 2013年4月

結婚の条件「待っていてくれた人」

「どうでしたか?」
担当者に訊かれ「どうしていいのかわからなくなってきました。」と正直にお話ししました。
「人が羨ましがらないかもしれませんものね。」
私は驚いて担当者の顔を見ると、担当者は静かに笑っていました。
「あの方ね、お母様がご病気で、結婚をしたところを見せて安心させたいというご希望で入会されたんですよ。
普通ならばあのような方は、結婚相談所へ来られるタイプではないかもしれません。
私はこれをご縁だと思っていますが、あとお決めになるのはご自身です。」

帰り道、私は悩みました。
あの方からのお断りがあるかもしれません。
私はいつの間にか「それは哀しいなぁ」と思っていました。
ネットで彼の椅子を見ました。
温かみがあるその椅子は、一生モノの雰囲気がありました。
「個展に行ってみよう。。。そして決めよう。。」
私は担当者に電話を入れ、「個展に行ってみる」その旨を伝えました。

彼に連絡は入っていたようで、小さな画廊の会場に入ると彼は喜んで迎え入れてくれました。
色々と面白い説明を受けながら、私は彼の椅子に座ってみたいと思っていました。
「座っていいですか、どれかに。。。」
「どうぞどうぞ、椅子は座るものです。」
彼に促されて座った椅子は、まるで私のためのようにしっくりと体に馴染み、暖かいものに抱かれているように感じました。
この人と一緒に入れば、一生こんな気持でいられるのかしら。。。
私、ずっとこの椅子に座っていたいかも。。。
彼はそんな私の傍らで、ニコニコと見つめてくれていました。

画廊を出て、私は考えていました。
羨ましがられることがそんなに大事だろうか。。。
見返すためだけに私は結婚しようとしてるの?
それとも焦って、とにかく結婚をつかもうとしているの?

若いカップルが楽しげに行き過ぎていきます。
そっと想像上の隣の人の手を握る仕草をしてみました。
その手は彼の繊細な手でした。

私はその足で結婚相談所へ向かい、担当者へ「結婚を前提で、彼とお付き合いしたい」と告げました。
「相手樣、随分とお待ちでいらっしゃいましたよ。」
担当者は、彼が私の写真で一目惚れをしていてくれたことを話してくださいました。
私の頑な態度がいつか溶けていくことを予期していた担当者は、彼に「すこし待ってみてはどうですか」とお話し下さっていたのだそうです。
「そこまでしてくれることってないんじゃない?」そう言った親友の言葉を思い出していました。
「ありがとうございました。。。これからもよろしくお願い致します。」
私は担当者に、満面の笑顔で気持ちを伝えました。

結婚の条件「溶けていく心」

待てど暮らせど私にアプローチを掛けてくださる方は表れませんでした。
ネットを通じて自分から検索することも出来ますので、条件に会う方を探してはアプローチを試みましたが、受け入れてくださる方もいませんでした。
「かならず見つかる」結婚相談所のキャッチフレーズが忌々しく感じます。
私は担当者に電話を入れ、相手を嘘つき呼ばわりしてしまいました。
「青柳さん、ハードルを少し下げてみましょう。。。」
担当者がご提案下さいます。
「青柳さんのことを好ましいとお感じになった男性がいても、あの条件をご覧になるとお相手はみな尻込みなさいます。
それに条件ばかり高い気難しい女性かと思われてしまう可能性も大いにあるのですよ。」
私は「いやです!探してください!お金払ってるんですから!」
そう言い捨て、バーンと電話を切ってしまいました。

女子大時代からの親友を呼び出し、そのことを話しました。
「ねぇ。。。その担当者の人、いい人なんじゃないの?」
彼女がそう言い出すので「なんでよ!」と噛み付くと、「普通そこまで言ってあげる必要ないでしょ。アンタお金払ってるし、月会費も払ってるし、アンタみたいな無茶苦茶言う人間なんかただの物の数だからさ、見つからないままずっとお金引っ張り続ければいいじゃない?」
「そんなの詐欺じゃない!」と私が言うと「詐欺じゃないわよ、アンタがクレーマーなのよ!」
そうなのかしら。。。と少し心当たりはありますから黙ってしまいました。
「ちょっとだけ。。。ちょっとだけでいいから、その人のいう事に耳を傾けてみて、お願い!」
親友はそう拝むような格好をし、ペロリと舌を出しました。
「見栄で結婚するんじゃないんだよぉ。アンタが幸せになるタメだよ!」

私は次の日、前日の無礼を謝り、担当者に条件の変更を告げました。
担当者は「実は紹介したい人がいるの。会ってみませんか?」とその場で話を下さいました。
職業は椅子の作家。
中学卒業と同時に椅子職人の弟子入りをし、今はちょっとした個展も開くほどの人。
多くのファンも居るのだそうです。
私が初めに出した条件とマッチする箇所は、体型と年齢だけ。。。
「この方のいいところは、とても誠実でウィットに富んでいて知的なところ。」
中卒なのに知的?
私は自分の耳を疑いました。
しかし、そんなに言うならば会ってみようとも思いました。

セッテイングされた日に、結婚相談所の一室で彼に会いました。
爽やかな笑顔と繊細な指先が美しい、すずしげな青年でした。
自分のことを話すときに時折見せる純粋な表情が、私に好感を与えます。
なるほど、知的さも感じますし、話しに飽きさせない機知があります。
椅子を学ぶため、イタリアも放浪したそうです。
「じゃあ、イタリア語も?」と質問をすると「だって必要なら仕方ないですよ、身につきます。」
私は。彼に惹かれつつある自分を感じていました。
学歴がどうあれ、彼は一つのものを極めようとする過程で、多くを吸収し成長してる人なのでしょう。
学歴で判断した私を恥じました。
「今度僕の個展に来てください。」そう言われ「ぜひ」と私も答え、別れました。

結婚の条件「頑なな私」

32才の誕生日を迎えた私は、後輩の女の子たちがどんどん寿退社をしていくことにずっと焦りを感じています。
いくら結婚が遅くなった世の中とはいえ普通のOLでキャリアがあるわけでもなければ、32才は充分売れ残りです。
化粧室で、「お局さん」と後輩たちが私を揶揄するのを個室の方から偶然聞き、声が出るのを必死で抑えながら悔し涙を流した日もあります。

誘われた合コンで、私がはしゃいでいたと言うのです。
「いい年したお局さんが、頭数合わせに誘っただけなのに滑稽よね、滑稽!」
私はシラケさせてはいけないと、一生懸命頑張っただけです。
それをそんなふうに言われ、私はどうしていいのかわからなくなってしまいました。
会社での私はだんだんと口数が減り、とうとう後輩の子たちと話すのはお小言を言う時だけになってしまいました。

私は貯金もそこそこにありましたから、結婚相談所へ入会を決めました。
この結婚相談所は担当に付いてくださる方が決まっており、私の母ほどの年齢の方が私の担当に付いてくださいました。
条件を書く欄があり、相手の学歴や職業年収などの希望にチェックを入れるのです。
ふと私を馬鹿にしている後輩たちの顔が目に浮かびました。
「あの子たちがうらやましがるような結婚相手でないと。。。」
私は学歴は大卒以上、職業を「医者弁護士テレビ関係者」などにチェックを入れ、年収は2000万以上と希望しました。
容姿に対しても希望は出せますから、身長180以上中肉中背でとしたのです。
それに「出来れば年下で」とも付け加えました。

「青柳さん。。。」
青柳というのが私の名前なのですが、担当の女性が少し間を置いて口を開かれました。
「たくさん夢もお持ちでしょうが、条件をあまりの狭めていらっしゃるとほんとうに良い出会いが逃げていくということもありえますよ。」
「私が歳を取っているからですか!贅沢を言っているとおっしゃるの?」
私は担当の方の言葉にカチンと来て、そう言い返しました。
本当はそんなふうに私が怒ることがおかしいのです。
至極当然のことを、担当者はおっしゃっているのです。
結婚は気持ちの部分が大きいのですから、こんな条件ばかり並べたってダメなのです。
でも私の心は荒みきっていました。
「いいんですよ、いいんです。
それではこれでプロフィールを建てておきましょう。」
その日はこれで、結婚相談所を後にしました。