結婚の条件「溶けていく心」

待てど暮らせど私にアプローチを掛けてくださる方は表れませんでした。
ネットを通じて自分から検索することも出来ますので、条件に会う方を探してはアプローチを試みましたが、受け入れてくださる方もいませんでした。
「かならず見つかる」結婚相談所のキャッチフレーズが忌々しく感じます。
私は担当者に電話を入れ、相手を嘘つき呼ばわりしてしまいました。
「青柳さん、ハードルを少し下げてみましょう。。。」
担当者がご提案下さいます。
「青柳さんのことを好ましいとお感じになった男性がいても、あの条件をご覧になるとお相手はみな尻込みなさいます。
それに条件ばかり高い気難しい女性かと思われてしまう可能性も大いにあるのですよ。」
私は「いやです!探してください!お金払ってるんですから!」
そう言い捨て、バーンと電話を切ってしまいました。

女子大時代からの親友を呼び出し、そのことを話しました。
「ねぇ。。。その担当者の人、いい人なんじゃないの?」
彼女がそう言い出すので「なんでよ!」と噛み付くと、「普通そこまで言ってあげる必要ないでしょ。アンタお金払ってるし、月会費も払ってるし、アンタみたいな無茶苦茶言う人間なんかただの物の数だからさ、見つからないままずっとお金引っ張り続ければいいじゃない?」
「そんなの詐欺じゃない!」と私が言うと「詐欺じゃないわよ、アンタがクレーマーなのよ!」
そうなのかしら。。。と少し心当たりはありますから黙ってしまいました。
「ちょっとだけ。。。ちょっとだけでいいから、その人のいう事に耳を傾けてみて、お願い!」
親友はそう拝むような格好をし、ペロリと舌を出しました。
「見栄で結婚するんじゃないんだよぉ。アンタが幸せになるタメだよ!」

私は次の日、前日の無礼を謝り、担当者に条件の変更を告げました。
担当者は「実は紹介したい人がいるの。会ってみませんか?」とその場で話を下さいました。
職業は椅子の作家。
中学卒業と同時に椅子職人の弟子入りをし、今はちょっとした個展も開くほどの人。
多くのファンも居るのだそうです。
私が初めに出した条件とマッチする箇所は、体型と年齢だけ。。。
「この方のいいところは、とても誠実でウィットに富んでいて知的なところ。」
中卒なのに知的?
私は自分の耳を疑いました。
しかし、そんなに言うならば会ってみようとも思いました。

セッテイングされた日に、結婚相談所の一室で彼に会いました。
爽やかな笑顔と繊細な指先が美しい、すずしげな青年でした。
自分のことを話すときに時折見せる純粋な表情が、私に好感を与えます。
なるほど、知的さも感じますし、話しに飽きさせない機知があります。
椅子を学ぶため、イタリアも放浪したそうです。
「じゃあ、イタリア語も?」と質問をすると「だって必要なら仕方ないですよ、身につきます。」
私は。彼に惹かれつつある自分を感じていました。
学歴がどうあれ、彼は一つのものを極めようとする過程で、多くを吸収し成長してる人なのでしょう。
学歴で判断した私を恥じました。
「今度僕の個展に来てください。」そう言われ「ぜひ」と私も答え、別れました。