結婚の条件「待っていてくれた人」

「どうでしたか?」
担当者に訊かれ「どうしていいのかわからなくなってきました。」と正直にお話ししました。
「人が羨ましがらないかもしれませんものね。」
私は驚いて担当者の顔を見ると、担当者は静かに笑っていました。
「あの方ね、お母様がご病気で、結婚をしたところを見せて安心させたいというご希望で入会されたんですよ。
普通ならばあのような方は、結婚相談所へ来られるタイプではないかもしれません。
私はこれをご縁だと思っていますが、あとお決めになるのはご自身です。」

帰り道、私は悩みました。
あの方からのお断りがあるかもしれません。
私はいつの間にか「それは哀しいなぁ」と思っていました。
ネットで彼の椅子を見ました。
温かみがあるその椅子は、一生モノの雰囲気がありました。
「個展に行ってみよう。。。そして決めよう。。」
私は担当者に電話を入れ、「個展に行ってみる」その旨を伝えました。

彼に連絡は入っていたようで、小さな画廊の会場に入ると彼は喜んで迎え入れてくれました。
色々と面白い説明を受けながら、私は彼の椅子に座ってみたいと思っていました。
「座っていいですか、どれかに。。。」
「どうぞどうぞ、椅子は座るものです。」
彼に促されて座った椅子は、まるで私のためのようにしっくりと体に馴染み、暖かいものに抱かれているように感じました。
この人と一緒に入れば、一生こんな気持でいられるのかしら。。。
私、ずっとこの椅子に座っていたいかも。。。
彼はそんな私の傍らで、ニコニコと見つめてくれていました。

画廊を出て、私は考えていました。
羨ましがられることがそんなに大事だろうか。。。
見返すためだけに私は結婚しようとしてるの?
それとも焦って、とにかく結婚をつかもうとしているの?

若いカップルが楽しげに行き過ぎていきます。
そっと想像上の隣の人の手を握る仕草をしてみました。
その手は彼の繊細な手でした。

私はその足で結婚相談所へ向かい、担当者へ「結婚を前提で、彼とお付き合いしたい」と告げました。
「相手樣、随分とお待ちでいらっしゃいましたよ。」
担当者は、彼が私の写真で一目惚れをしていてくれたことを話してくださいました。
私の頑な態度がいつか溶けていくことを予期していた担当者は、彼に「すこし待ってみてはどうですか」とお話し下さっていたのだそうです。
「そこまでしてくれることってないんじゃない?」そう言った親友の言葉を思い出していました。
「ありがとうございました。。。これからもよろしくお願い致します。」
私は担当者に、満面の笑顔で気持ちを伝えました。